テレワークの今後
新型コロナ禍で活用が進んだテレワークだが、現在も一定の実施率を保っている。東京都 23区では「ほぼ100%の実施」から「不定期の利用」まで、 何らかの形でテレワークを行っている就業者は今年6月時点で50.6%に達する(内閣府調べ)。週1回はテレワーク可能など「ハイブリッド勤務」を維持している企業が多いと思われる。企業としては、テレワークの生産性や労務管理上の問題を懸念しつつも、人材獲得競争上の必要性などからテレワークを維持せざるを得なくなっているのだろう。
米国でテレワークの生産性を分析した興味深い研究がある。特許商標庁の特許審査官に導入された全面テレワークの効果を分析したところ、4.4%の生産性向上がみられたのだ。特許審査官のように業務の独立性が高く、従業員が仕事を熟知している場合は、生産性が上がるという結論で、「仕事がほぼ1人で完結する場合はテレワークで生産性が上がりそうだ」という直観とも一致する。
また、同じ技術分野を担当する審査官が近くに住む場合には対面交流が可能となり、その場合、生産性は更に上昇した。テレワークしたとしても、集積のメリットは依然大きいことを意味する。
テレワークで生産性が向上するケースが限定されるとすれば、今後、テレワークをする従業員と出社する従業員との間で賃金に差をつける企業も出てくるかもしれない。
2022年11月21日
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(2022年11月7日)
1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研などを経て2020年9月から現職。専門は住宅・土地政策、日本経済。主な著書に、『捨てられる土地と家』(ウェッジ)、『縮小まちづくり』(時事通信社)、『限界マンション』(日本経済新聞出版社)など。
【米山秀隆オフィシャルサイト】