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訪問税で観光地はどう変わる?

地域政策研究家
荒田 英知 氏

10月1日、広島県廿日市 (はつかいち) 市は世界遺産の厳島 (いつくしま) 神社がある宮島を訪れる観光客を対象に、1人100円の「宮島訪問税」を創設した。対岸からの船賃に上乗せして徴収し、年払いも可能。2019年には過去最多の465万人余が来島しており、年間3億円程度の税収を見込む。これを島内のごみ処理やトイレの増設などに充てる「原因者課税」が実現した。

新型コロナ禍が沈静化し、世界中の人気観光地には再び人々があふれ始めた。そこで再燃したのがオーバーツーリズム。水の都と呼ばれるイタリア・ベネチアでは、押し寄せる観光客で地域環境が急速に悪化し、ユネスコの世界遺産委員会は「危機遺産」への登録を勧告した。これを回避するため入域税の議論が進み、2024年から繁忙期の春と夏の週末に、14歳以上の日帰り客から1人5ユーロを徴収することが決まった。

沖縄県竹富町にある竹富島は琉球の生活文化が色濃く残りリピーターをひきつけている。2019年から地域保全に対する協力金として1人300円の入島料を任意で求めてきた。ところが、支払う来島者は1割ほどに低迷したため、町は全町を対象とした訪問税の検討を開始した。

三者三様の取り組みであるが、観光地の持続可能性を高めるために、観光客にも負担を求めることは理にかなっている。訪問税をめぐる動きは、「ポストコロナ」時代の観光戦略としても注目に値するだろう。

2023年10月30日

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荒田 英知 氏

1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学を卒業後、PHP研究所に入社。地域政策分野の研究員として30年以上全国をフィールドワーク。北海道大学特任教授、九州国際大学非常勤講師も務めた。

荒田 英知 (あらたひでとも) 氏