時代を読む

選挙と政策

慶應義塾大学名誉教授
竹中 平蔵 氏

G7サミットの議長を無事に終え、岸田内閣に対する支持率は持ち直し傾向だ。安倍内閣で4年以上も外相を務めた岸田首相はやはり外交に関しては強い関心を持ち、成果をあげていると言えるだろう。一方で内政に関しては、小泉・安倍・菅の各内閣に比較して大きな特徴が見られないとの評価も聞かれる。

政権運営は実に困難な仕事だ。メディアの評価や世論調査を気にしながら政策を進め、民主的な「選挙」という手続きで勝っていかねばならない。その選挙(総選挙)が近い、とみられている。来年は自民党総裁選挙があるから、その前に解散・総選挙を行い、そこで勝って党総裁選挙を無風で乗り切る。第2期安倍政権が長期政権になったのもそうした戦略を取ったからだ。支持率が上がった状況下で、早晩総選挙があると考えるのは自然な発想であろう。

重要なのは、内閣としてどのような政策を掲げ、実現していくかだ。防衛費の増額、子ども政策の強化など、新しくかつ重要な問題提起とその対応を政府は行なっている。問題は、財源に関する結論が先延ばしされていること。選挙時期によっては財源を明確にせねばならなくなる。世論は常にフワフワしている。世論調査をみると、防衛力増強には一定の理解を示していても、増税が絡むと反対に転じるという傾向が出ている。

何を優先するか。覚悟を求められているのは有権者のほうかもしれない。

2023年6月19日

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竹中平蔵 氏

1951年生まれ。
ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学教授などを経て2001年の小泉内閣発足後、経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣などの閣僚を歴任。慶應義塾大学名誉教授。政府の各種会議のメンバーも務める。
【竹中平蔵公式ウェブサイト】

竹中平蔵(たけなか へいぞう)