「ふるさと納税」に死角はないか
地域政策研究家
荒田 英知 氏
荒田 英知 氏
総務省の調査で、2022年度のふるさと納税が約9,654億円に達した。3年連続で過去最高額を更新し、スタートした2008年度の約81億円から15年間で約119倍にも増加。地域活性化に関する施策としては他に類を見ない注目度である。
人気の秘密は「返礼品」。寄附金額に応じて肉や魚介など地域の特産品が贈られる。お得な返礼品が見つかる仲介サイトが生まれ、新型コロナ禍の巣ごもり消費も後押しした。
受け入れ額上位には宮崎県都城市や北海道紋別市・根室市などの常連が名を連ね、地元産業を潤している。
本来は任意の自治体に寄附をすると、2,000円を除いた額が住民税や所得税から控除される制度で、所得などにより上限があるが、生まれ育った故郷や応援したい自治体に、自分の意思で税を移すことができる。
税収に恵まれた都市部と税源の少ない地方の格差を是正する効果も期待された。ここ数年で大都市からの住民税流出額が膨らんだため、京都市や名古屋市などは新たな返礼品を追加して巻き返しを図っている。
さながら返礼品競争の様相であるが、特産品とは呼べない品物を出す自治体もあり、国は返礼基準の厳格化を重ねてきた。大事なのは、ふるさと納税がどんな施策に活かされたかを自治体と寄附者で共有することである。返礼品はそれに対する感謝にほかならないはず。絶好調の今こそこの点を再認識すべきだろう。
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(2023年8月21日)
1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学を卒業後、PHP研究所に入社。地域政策分野の研究員として30年以上全国をフィールドワーク。北海道大学特任教授、九州国際大学非常勤講師も務めた。