時代を読む

「ダボス会議 2024」より

慶應義塾大学名誉教授
竹中 平蔵 氏

1月半ばに開かれたダボス会議。今年は「Rebuilding Trust (信頼の再構築へ)」がメインテーマだった。筆者が見聞した中で印象に残ったことが3点あった。

第1は、2024年のマクロ経済の動向で、前年より少し減速するが当初懸念されていたほどではない、という雰囲気が支配的だったこと。米国経済がソフトランディングしそうだ、という点が大きい。一方で、中国経済を懸念する声も聞かれた。

第2は世界秩序に関し、従来の「多国間主義 (Multilateralism)」に変わって「多極システム (Multi-polar global system)」という言葉が頻繁に使われたことだ。この点に関してはG7、中国・ロシア、グローバル・サウスといった極の橋渡し役として日本の役割が期待される、といった意見も興味を引いた。

そして第3は、生成系AIについて世界のビジネスリーダーたちが本気で向き合う姿勢が強烈に示された点だ。今後の経済社会の中核に、生成系AIが位置付けられつつある。

今年はアメリカ大統領選挙など、多くの政治イベントがあり、不確定要素は尽きない。そうした中、シンガポールの新大統領シャンムガラトナム氏の「Do Homework (直訳すると『宿題をする』)」という言葉が印象的だった。結局は各国それぞれの課題にしっかり取り組むことが信頼の回復につながる…。当たり前のことだが、重要なメッセージに思えた。

2024年2月19日

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竹中平蔵 氏

1951年生まれ。
ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学教授などを経て2001年の小泉内閣発足後、経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣などの閣僚を歴任。慶應義塾大学名誉教授。政府の各種会議のメンバーも務める。
【竹中平蔵公式ウェブサイト】

竹中平蔵(たけなか へいぞう)