時代を読む

「超円安」の行方は?

東京大学名誉教授
伊藤元重 氏

円レートが極端な円安になっている。ニューヨークでラーメン1杯3,000円ほどもするそうだが、インフレに加え、1ドル=150円近い「超円安」で換算するとそうなる。

こうした「超円安」の背景には、日米の金利差が存在する。米国の長期金利は4%前後、日本の長期金利は0.6~0.7%前後である。ドルと円の大きな金利差が、為替レートを極端に円安 (ドル高) に振っている。その為替レートが理不尽なくらい円安であろうと、大きな金利差が存在する限り、動くことはない。

では、この先の為替レートの動きはどうなるのだろうか。日米の金利の動きがカギとなる。為替レートが金利差に非常に敏感であるので、日米の金利差が縮むようであるなら、円ドルレートは大きく円高方向に動くことになる。米国ではインフレが鈍化していけばドル金利は下がっていくだろう。一方、日本では金融緩和が修正されていけば、円金利は上がっていくだろう。当然、ドル円の金利差が小さくなることは考え得る。

ただ、この先の日米の金利の動きは不確定だ。米国でインフレの沈静化が遅れれば、金利は下がらないかもしれない。日本でも、日本銀行は急速な金利上昇には慎重なように見える。

結局、為替レートは金利次第で、金利の先行きを予想することも困難であるのだ。今後の金利の動向に注目したい。

2024年2月5日

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伊藤元重 氏

1951年生まれ。
米国ヒューストン大学経済学部助教授、東京大学経済学部助教授などを経て1993~2016年東京大学の経済学部と大学院経済学研究科の教授を歴任。2007~2009年は大学院経済学研究科研究科長(経済学部長)。2016年から2022年3月まで学習院大学国際社会科学部教授。東京大学名誉教授。
【伊藤元重研究室】

伊藤元重(いとう もとしげ)