時代を読む

生成AIはどこに向かうのか

大阪経済法科大学
経済学部教授
米山秀隆 氏

Chat(チャット)GPTに代表される生成AIの活用が進んでいる。質問に対し、なぜ機械が自然な言語で返せるのか。そのためには言葉の知識を学習させる必要があるが、基になるのはネット上にある大量の文書テキストデータである。ある文章の途中から後ろを隠し、次にくる単語を当てる課題をひたすら解かせる。その過程で、AIにはあらゆる単語と単語の関係性が蓄積されていく。

蓄積されるのが、脳神経を模したニューラルネットワークである。単語がうまく当てられるよう学習によって神経間の結びつき具合が調整される。生成AIは質問に対し、あらゆる文字列の中から次にくる最も確からしい単語を出力している。

AIの学習過程では、興味深い現象が生じる。学習の初期時点ではこなすことができなかったものが、学習の規模が大きくなると突然できるようになるという点と、事前に学習していない課題でもこなせるようになるという点である。

その理由はいまだ解明されていないが、子どもが成長過程で突然言葉を話すようになり、また、学んだ知識から新しい課題にも対応できるようになることに近いとも捉えられている。それもそのはずで、もともとニューラルネットは人間の脳神経の仕組みを模している。将来的には、人間の脳と同じ課題解決能力を持つ人工知能である、汎用人工知能につながると考える専門家もいる。

2023年11月13日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研などを経て2020年9月から現職。専門は住宅・土地政策、日本経済。主な著書に、『捨てられる土地と家』(ウェッジ)、『縮小まちづくり』(時事通信社)、『限界マンション』(日本経済新聞出版社)など。
【米山秀隆オフィシャルサイト】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏