きらめき企業

他社に先駆けた戦略で
販路とブランド力を獲得

東洋大学経営学部教授
山本 聡 氏

外国船の乗組員だった岡田寅太郎氏が戦後、個人創業した株式会社宗家源吉兆庵(東京都中央区)。和菓子業界でよく知られる同社は他社に先駆けた事業展開で成長してきた。

「果実を使った和菓子のパイオニア」と評されるように、果実をふんだんに用いた菓子の製造・販売に傾注したのがそのひとつ。見た目も美しい果実菓子は贈答品としての評価が高く、全国の百貨店などで販売されている。他社と差異化した商品戦略で、新たな販路を開拓してきたのだ。

もうひとつは早い時期から海外へ進出したこと。1993年シンガポール・台湾・イギリス、1994年アメリカ、1996年香港と、1990年代に相次いで各国に店舗を設立した。「世界に和菓子を広めたい」という経営陣の思いが背景にあり、一方で新たなブランド戦略という側面もあった。

このため、ロンドンならピカデリー、ニューヨークならマディソン・アベニューやワールドトレードセンター、ロサンゼルスならビバリーヒルズ、ハワイならアラモアナセンターといった具合に、各地の一等地・一流施設に出店している。

その結果、海外売上高が増え、語学が堪能といった多様な人材が同社に集うことにもなった。

2020年5月25日

株式会社宗家源吉兆庵 :

東京都中央区銀座6-9-8
【株式会社宗家源吉兆庵 HP】

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山本聡

1978年生まれ。
機械振興協会経済研究所、東京経済大学経営学部専任講師・准教授を経て2019年4月から東洋大学経営学部教授 (担当は中小企業経営論)。金型や部品加工など素形材産業を主な対象としながら、国内外の中小企業の経営体制の変化を解明することが研究テーマ。経営者や技術者向けにレポートを執筆するほか、さまざまなセミナー講師も務める。

山本聡