きらめき企業

技術力をいかにアピールするか

立教大学名誉教授
山口 義行 氏

埼玉県草加市にある創業85年の有限会社髙中板金工業。中核事業は住宅、工場、神社仏閣などの金属製の屋根や外壁、雨樋の工事を行う建築板金業で、3代にわたり技術を継承してきた。しかし、建築板金の仕事は建設会社や工務店の下請けが多く、コスト削減のあおりを受けやすい。また、既製品を使った「さして技術を必要としない低単価な仕事」が増え、収入が急減した。工事ができない雨の日は仕事を休まざるを得ないという不安定さも避けて通れない。このままでは、培ってきた技術や技能が途絶えてしまう―。そんな危機意識が代表取締役の髙橋正哲(まさのり)氏にある挑戦を促した。

知り合いのIT企業と連携して「MASANORI」ブランドを立ち上げ、銅板ランプシェード「HAORI」を製作。これが雑誌などのメディアに取り上げられ、草加市の「ふるさと納税」の返礼品に認定されるなど、同社の技術をアピールするのに大いに役立った。それを機に、ホームページも施工や加工の技術をアピールするものへとリニューアルし、その結果、飲食店のレンジフードの銅板貼りなど、加工技術を生かした仕事の依頼が増えた。自社の技術力をどうアピールするか。

「ランプシェード」を戦略ツールにした同社の試みは、同様の悩みを持つ多くの中小企業にとってもヒントになる。

2018年11月12日

有限会社髙中板金工業 :

埼玉県草加市長栄4-11-10
【有限会社髙中板金工業 HP】

過去記事一覧

山口義行(やまぐちよしゆき)氏

1951年愛知県生まれ。
2001年に立教大学経済学部教授に就任。2017年4月から名誉教授。外務省参与として中小企業の海外展開、関東経済産業局「新連携支援」政策の事業評価委員長として中小企業連携支援にかかわるほか、企業経営者との勉強会を全国で開催するなど、自ら中小企業支援を積極的に展開。
【山口義行・公式HP】

山口義行氏