細く長く地域とともに
ひんやりツルっとしたのど越しのそうめんといえば、いわずと知れた夏の風物詩だが、実は冬の寒い時期に作られている。
奈良県吉野郡東吉野村瀧野。自然豊かなこの山村に株式会社坂利製麺所はある。東吉野村はかつて林業が盛んだったが、高齢化が進む中、若者は次々と村から離れていった。若者に定着してもらうためには仕事が必要。1984(昭和59)年、当時専業主婦だった坂口良子氏(現専務取締役)が雇用対策として始めたのがそうめん作り。春夏秋は林業、そうめん作りは冬の寒い時期に適しているため、雪に閉ざされる時期の収入源になる。
3人の子育てをしながらの会社経営は苦労が耐えなかったが、ポストハーベスト(収穫後の農産物への農薬などの処理)の問題が指摘された時期とも重なり、子どもにも安心して食べてもらいたいと、国産小麦にこだわった。そうめんを延ばす際に使う油も良質なごま油を使用。経営者であると同時に、母として安心できる食を追究した。
今では、息子の坂口利勝氏にバトンタッチ、実質的に経営を任せている。母が心がけた「安心して子どもに食べさせたい」という思いもしっかりと受け継ぎ、「これからも細く長く作っていきたい」と話す利勝氏。地元に根づきながら全国のそうめんファンを喜ばせている。
2018年7月9日
株式会社坂利製麺所 :
奈良県吉野郡東吉野村瀧野18-1
【株式会社坂利製麺所 HP】
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(2018年7月2日)
1968年生まれ。
テレビ朝日「ニュースステーション」やフジテレビ「ニュースJAPAN」の報道ディレクターとして活躍。多くの経済番組も制作。現在、中小企業診断士として企業や商店街などの経営相談、支援活動を行うとともに企業向けの動画制作講座の講師も努める。株式会社プラウドコンサルティング代表取締役。一般社団法人板橋中小企業診断士協会代表理事。
【株式会社プラウドコンサルティング HP】