きらめき企業

時代に流されないしたたかさ

立教大学名誉教授
山口 義行 氏

福岡県筑後市で繊維製品を製造・販売する宮田織物株式会社は、伝統工芸品の久留米絣の機屋(はたや)として1913(大正2)年に創業した。しかし、昭和中期には久留米絣が衰退。同社は広幅織物へ転換し、主力製品として「綿入れ袢天(はんてん)」を生産。最盛期には年間約53万枚も出荷していた。

だが、それも時代の変化とともに安い海外製品に押され、売り上げは激減。同社が決断したのは「時代の逆をいく」こと、つまり徹底した高品質化だった。糸選びから織り、縫製まで自社一貫生産。素材、製法、デザインも妥協せず、その結果、同社の袢天は福岡デザインアワードで3回連続入賞。世代や性別を超え、海外でも愛用されるようになった。

とはいえ、高級化路線だけでは売り上げは伸びず、卸販売中心で消費者から遠い存在だった。そこで手頃な価格のオリジナル布地「和木綿(わもめん)」を開発。その「和木綿」と久留米絣とを組み合わせた「彩藍(さいあい)」、和木綿のみを使用した「らしか」など独自の婦人服ブランドを次々に立ち上げた。ドラマの衣裳にも採用され、海外の著名なデザインユニットとのコラボでも注目を集めた。

時代と向き合いながらも、時代に流されない。中小企業にはそんな「したたかさ」が必要なのかもしれない。

2018年9月25日

宮田織物株式会社 :

福岡県筑後市羽犬塚375
【宮田織物株式会社 HP】

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山口義行(やまぐちよしゆき)氏

1951年愛知県生まれ。
2001年に立教大学経済学部教授に就任。2017年4月から名誉教授。外務省参与として中小企業の海外展開、関東経済産業局「新連携支援」政策の事業評価委員長として中小企業連携支援にかかわるほか、企業経営者との勉強会を全国で開催するなど、自ら中小企業支援を積極的に展開。
【山口義行・公式HP】

山口義行氏