きらめき企業

高齢者向けIoT体感ルーム

立教大学名誉教授
山口 義行 氏

富山県富山市の株式会社ケィ・ディックはいわゆる「町の電気店」。だが、量販店やネット通販の普及で、町の電気店は激減しており、このままでは消滅してしまう。自分たちの存在意義は何なのか。代表取締役社長の黒田保光氏が見つけた答えは「町づくり」だった。

同社の売り上げの約8割は、顧客宅を巡回訪問する「御用聞き」から生まれている。その顧客のほとんどは高齢者。つまり、高齢者の暮らしやすい町づくりこそが電気店の使命なのだ。そこで黒田氏は、高齢者とその家族に電気店の持つ役割を発信することで業界自体をブランド化しようと、電気店仲間24社と「チームまちのでんきや」を結成。さらに自店舗の半分を高齢者向けのIoT(モノのインターネット)体感ルーム「IoTラボ」に改装した。

マッサージチェアに座るだけで体重や血圧などが計測され、クラウドを通じて施設や遠方の家族が確認できる見守りシステムなど様々なIoT製品を体験できるようにした。その取り組みは様々な企業からのオファーを受け、大手ハウスメーカーの高級シニア住宅への導入などにつながっている。まず自社の存在意義を問い、そこで得た答えを基軸に新たな展開を模索する。そんな実践の積み重ねがより強靭な中小企業を生んでいく。

2018年7月30日

株式会社ケィ・ディック :

富山県富山市西田地方町2-12-3
【株式会社ケィ・ディック HP】

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山口義行(やまぐちよしゆき)氏

1951年愛知県生まれ。
2001年に立教大学経済学部教授に就任。2017年4月から名誉教授。外務省参与として中小企業の海外展開、関東経済産業局「新連携支援」政策の事業評価委員長として中小企業連携支援にかかわるほか、企業経営者との勉強会を全国で開催するなど、自ら中小企業支援を積極的に展開。
【山口義行・公式HP】

山口義行氏