新たな交流を生む地域の特産品
神戸国際大学経済学部教授
中村 智彦 氏
中村 智彦 氏
すっかり枯れてからからになった豆のさやを開けると、その中には真っ赤なルビーのような豆が入っている。それを見ると、子どもはもちろん大人までもが歓声を上げる。
山形県東置賜郡川西町に伝わる在来種の赤豆は、山形特産の紅花にちなんで紅大豆と名付けられ、その名称は川西町役場が登録商標として保有している。一時は失われてしまっていたこの豆を、川西町の農家が苦労して復活させたのだ。
収量が少なく、栽培に手間のかかる紅大豆を特産品にまで育て上げたのは、川西町紅大豆生産研究会のメンバーたちだ。「ほら、ほかの産地のものとは色つやが違うでしょう。栽培や収穫の方法などで、この色を出していくのですよ」と会長の淀野貞彦氏(農園経営)は話す。
蒸すだけでほこほこした甘みが出て、まるで栗のような味わいだ。生産がいったん再開された後も、売り上げが伸びなかった時期があった。しかし、栄養分が豊かな点も注目されて、今ではカゴメやマルヤナギ小倉屋といった大手食品メーカーからも紅大豆製品が商品化されている。最近は各企業の社員たちだけではなく、消費者も産地である川西町を訪れるようになってきている。作る人と食べる人の新しい形の交流が生まれつつある。
2018年12月3日
川西町紅大豆生産研究会 :
山形県東置賜郡川西町大字上小松1567
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1964年生まれ。
大阪府立産業開発研究所などを経て2007年から神戸国際大学経済学部教授。専門である中小企業論・地域経済論では、現地での調査・研究を重視。中小企業間のネットワーク構築や地域経済振興プロジェクトにも数多く参画している。
【凡才中村教授の憂鬱 HP】