きらめき企業

変化への柔軟な対応で時代の荒波を乗り切る

東洋大学経営学部教授
山本 聡 氏

金属などの研磨と切削加工の技術で知られる長野県諏訪市の株式会社松一。従業員5人の小企業だ。

1927(昭和2)年に雑貨商として創業した同社は、戦中はあられ菓子を製造、戦後は諏訪地域の主産業だった時計産業の下請け部品企業に業態を転換し、さらに3代目の現代表取締役社長である松澤正明氏の代になってからは自動車部品仕上げ加工に進出。近年は脱下請けと自社商品開発を志向するなど、時代の変化に柔軟に対応して事業を変化させ、荒波を乗り越えてきた。

松澤氏は独自に表面処理の研究を行い、2002年から物質・材料研究機構と産学連携の共同研究に参画。兵庫県立大学大学院工学研究科の博士課程にも在籍して「匠の技プロジェクト」に従事した。2018年「信州の名工」に選ばれ、優れたもの作り技術者として名高い。

現在、大学・研究機関との連携による実験装置・治具などの開発・販売をしている同社。加えて、ベビージュエリーの「誕護(たんご)」など自社ブランドアクセサリーの開発・販売も開始した。高度なもの作りの技術と、変化をいとわない柔軟性、探求心を武器に、さらなるもの作りの高みを目指している。

2019年9月17日

株式会社松一 :

長野県諏訪市豊田文出230-1
【株式会社松一 HP】

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山本聡

1978年生まれ。
機械振興協会経済研究所、東京経済大学経営学部専任講師・准教授を経て2019年4月から東洋大学経営学部教授 (担当は中小企業経営論)。金型や部品加工など素形材産業を主な対象としながら、国内外の中小企業の経営体制の変化を解明することが研究テーマ。経営者や技術者向けにレポートを執筆するほか、さまざまなセミナー講師も務める。

山本聡