きらめき企業

コロナを乗り越えるため
酒蔵と酒店がコラボ

神戸国際大学経済学部教授
中村 智彦 氏

新型コロナウイルス感染症の拡大で、飲食店は来店客が激減、飲食店に納入される日本酒の販売も減っている。全国の酒蔵は飲食店向けの出荷が激減し、売り上げ低迷にあえいでいる。

山形県東置賜郡川西町の中沖酒造店は家族経営の小さな酒蔵だ。若主人の髙橋義孝氏が中心となって、昔ながらの丁寧な酒造りをしていて地元で人気があるが、コロナ禍が売り上げを直撃。そんな中、地元の酒店である羽根田酒店が中沖酒造店に声をかけ、コラボレーションが実現した。

新型コロナウイルス撲滅の思いを込めた「衆病悉除 願(しゅびょうしつじょ ねがい)」は、県産酒米・出羽燦々(でわさんさん)を100%使った中沖酒造店の純米大吟醸の原酒に、地元神社で祈祷してもらった「衆病悉除」と記された木札が付く。羽根田酒店の羽根田浩子氏は「地元では昔から疫病除けを願って衆病悉除の4文字を記した幣束(へいそく)をお祭りで使います。早くコロナが収まるようにという願いを込めています」と言う。4月に発売すると全国から問い合わせが殺到した。

「災い転じて福となす」というが、自らが動き出さないと、なかなか「福」は訪れない。厄病退散の木札のぶら下がった日本酒をテーブルに置くと、明るい気分になってくる。

2020年8月24日

株式会社中沖酒造店 :

山形県東置賜郡川西町西大塚1792-3
【株式会社中沖酒造店 HP】

羽根田酒店 :

山形県東置賜郡川西町上小松田町2384
【羽根田酒店 HP】

過去記事一覧

中村智彦氏

1964年生まれ。
大阪府立産業開発研究所などを経て2007年から神戸国際大学経済学部教授。専門である中小企業論・地域経済論では、現地での調査・研究を重視。中小企業間のネットワーク構築や地域経済振興プロジェクトにも数多く参画している。
【凡才中村教授の憂鬱 HP】

中村智彦氏