きらめき企業

東京のガラス産業の原点
江戸切子の新たな伝統創出

東洋大学経営学部教授
山本 聡 氏

江戸切子とは、江戸末期に生まれたガラスの表面にカットを入れる技術を用いて作られたガラス工芸品。東京・城東地域の伝統工芸品として名高く、その技術を現代に受け継ぐ株式会社清水硝子も葛飾区堀切の閑静な住宅街に社屋を構えている。

創業者の清水直次郎氏は、日本の近代ガラス産業の祖である工部省品川硝子製造所伝習生の今村仁之助氏からカットグラス技術を学び、戦前・戦後、大手ガラスメーカーの協力工場として、ガラス食器の加工業を展開。最盛期には従業員数が40人を超えるまでに規模を拡大した。

しかし、1980年代以降、ガラス加工の機械化や海外輸入品の増加、平成不況などが重なって苦境に陥ったガラス加工業者の中には廃業する事業者も少なくなかった。そんな中、清水硝子は江戸切子に着目し、1998年にオリジナル江戸切子のインターネット直販を開始した。

ロックグラス、タンブラー、ぐい呑みなど多様なラインアップをそろえ、 2012年には東京スカイツリー®の内装用に江戸切子を提供。現在では売上高の6割強をオリジナル商品が占める。東京のガラス産業の原点である江戸切子で新たな伝統を創出することに成功した。

2022年10月3日

株式会社清水硝子

東京都葛飾区堀切4-64-7
【株式会社清水硝子 HP】

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山本聡

1978年生まれ。
機械振興協会経済研究所、東京経済大学経営学部専任講師・准教授を経て2019年4月から東洋大学経営学部教授 (担当は中小企業経営論)。金型や部品加工など素形材産業を主な対象としながら、国内外の中小企業の経営体制の変化を解明することが研究テーマ。経営者や技術者向けにレポートを執筆するほか、さまざまなセミナー講師も務める。

山本聡