日本の問題

黒田総裁の功績

富士通総研 主席研究員
米山秀隆 氏

続投する黒田東彦日銀総裁のこの5年間の成果は「デフレでない状況」に変えただけではない。有効求人倍率が1974(昭和49)年以来の高水準になるなど、雇用を著しく改善させた。2%の物価安定目標こそ未達だが、賃金はじわじわ上昇。高齢者や女性の活用は改善の余地があるが、人材を最大限活用する経済に近づいた。円安による競争力回復やインバウンド需要拡大などがもたらした効果だ。もし、異次元緩和が行われず、円高が続いていれば、競争力確保のための合理化を余儀なくされ、縮小均衡から抜け出せないままだった。

問題は、日銀が国債を大量に買い続けた後始末をどうするかである。確かに、金融緩和の出口では、日銀が金融機関に支払う利子である超過準備の「付利」が上がる一方、日銀が保有する国債の利回りが低いことから、逆ざやとなる。しかし、デフレ脱却後、日銀が相応の利回りの国債を買える環境に変われば、長期的には必ず利益を得られるとの捉え方もある。出口で直面する赤字は、日銀が日本経済を支えてきた証左であるが、支えが成功すれば長い目で見て解消される性質のものと考えられる。

2018年3月26日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏