日本の問題

所有権放棄の仕組み

富士通総研 主席研究員
米山秀隆 氏

空き家など不要な不動産の所有権を放棄したい所有者が増えている。現状では、相続放棄すれば国に引き取ってもらうこともできる。相続放棄には遺産すべての放棄が必要だが、放棄後、自治体などの申し立てによって相続財産管理人が選任されれば、換価され残余が国庫に納付される。しかし管理人選任には費用を要し、行われるのはまれである。空き家が危険な状態になった場合、最終的には公費による解体となる。

相続放棄は空き家だけを選択することはできないが、今後、ほかにめぼしい遺産はないといったケースが増えれば、放棄が増加していく可能性がある。処理のため公費がかさむことを考慮すれば、最初から放棄できる一般ルールを定めておいた方が望ましい。

民法には「所有者のない不動産は、国庫に帰属する」との規定があり、登記に放棄手続きを設ければ、所有権放棄が一般に可能になる。国の管理負担が増すが、放棄時に費用負担を求める仕組みにすればよい。最近は管理放棄で、所有者不明不動産も増えているが、事後的に所有者探しに苦しむよりは、最初から放棄を認め国の所有に移しておく方が、利用しやすくなる。

2017年12月4日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏