日本の問題

豊かなゼロ成長の時代

青山学院大学特別招聘教授、元財務官
榊原英資氏

日本経済は高度成長時代の1956(昭和31)~1973(昭和48)年度(平均成長率9.1%)、安定成長時代の1974(昭和49)~1990年度(平均成長率4.2%)を経て、1990年代に成熟段階に入った。1991年度以降の平均成長率は1%前後。失われた20年と呼ばれることもあるが、むしろ「豊かなゼロ成長の時代」と呼ぶべきではないだろうか。

IMFの世界経済見通しによると、日本の1人あたり名目GDPは1987(昭和62)年にアメリカを抜いた。その後、1990年代後半に拮抗するようになり、2001年以降はアメリカの後塵を拝している。2016年の1人あたり名目GDPでは、日本はG7諸国の中でアメリカ・カナダ・ドイツ・イギリスに次ぐ5位。それでもフランス、イタリアを上回り、ドイツ、イギリスともそれほど大きな開きはなく、高いレベルを維持している。

また、所得格差という点では日本はアメリカよりかなり小さい。成長率は1%前後まで下がっているものの、平均的な日本の生活は平均的なアメリカの生活より豊かであるとみることもできるだろう。

2017年9月4日

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榊原英資 さかきばらえいすけ氏

1941年生まれ。
1965年大蔵省(現財務省)入省。東海財務局長、大臣官房審議官(国際金融局担当)、国際金融局次長、国際金融局長を経て1997~1999年財務官。現在は青山学院大学特別招聘教授、財団法人インド経済研究所理事長。
【財団法人インド経済研究所HP】

榊原英資氏