日本の問題

財政赤字いつまで

青山学院大学特別招聘教授、元財務官
榊原英資氏

2016年度末の国債発行残高は約838兆円(予算案ベース)、これに地方債などを加えた長期債務残高は約1062兆円に上る見込みだ。対GDP比では約205%と、世界最大規模。IMFの統計では、財政危機に陥ったギリシャでも対GDP比約177%(2015年)で、日本(同統計では2015年の日本の対GDP比は約248%)より低い。

これだけ発行額が多いのに国債市場が安定的に推移しているのは、家計の資産残高が約2727兆円(2014年末)と大きいうえ、金融機関への預金や貯金、保険料などの形で、国債のかなりの部分を間接的に家計が保有しているからだ。ここ5~10年の国債市場は安定的に推移するだろう。

しかし、日本は毎年対GDP比で5~6%の赤字(2015年約5.21%)を出しており、このままいけば、20年先には累積債務がGDPの300%を超えてもおかしくない。家計の貯蓄率はゼロ近傍で推移しており、家計の貯蓄残高と財政赤字の幅は急速に狭まっていく。10年前後の間に対策をとらないと国債市場が混乱し、財政危機に見舞われるリスクは高い。

2016年12月19日

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榊原英資 さかきばらえいすけ氏

1941年生まれ。
1965年大蔵省(現財務省)入省。東海財務局長、大臣官房審議官(国際金融局担当)、国際金融局次長、国際金融局長を経て1997~1999年財務官。現在は青山学院大学特別招聘教授、財団法人インド経済研究所理事長。
【財団法人インド経済研究所HP】

榊原英資氏