日本の問題

英EU離脱と円高株安

経済ジャーナリスト
大西良雄 氏

6月24日、英国の国民投票でEU離脱派が勝利、想定外の事態から狼狽売りが発生し、日経平均終値は前日比7.9%安と歴代8位の下落率を記録した。下落率は米ニューヨークダウの3.4%安を上回った。

日経平均がニューヨークダウを上回る下落率になったのは「円高リスク」が上乗せされたためだ。円は緊急避難の通貨として買われ、24日は一時1ドル=99円へ急騰、日中の上昇幅は7円60銭と過去最大を記録した。3月期決算上場企業(金融を除く)は今期3%前後の経常増益を予想するが、想定レートは最高で1ドル=105円。これを上回る円高が続けば輸出利益の減少、デフレ懸念から今期も減益予想に転換、市場はこれを株価に織り込み始める。

日米欧金融当局はドル資金の大量供給を実施、市場の動揺を収めにかかったが、危機はなお去らず、いつ避難通貨・円が買い進まれ円高が進行するか、予断を許さない。

100円割れが続けば、政府・日銀は為替介入、追加緩和に踏み切ろうが、米国は円安誘導に批判的だ。米国の了解を得て円高を止める策がとれれば市場は過度の悲観から脱することができるのだが。

2016年7月4日

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大西良雄 氏

1945年生まれ。
上智大学経済学部卒業後、東洋経済新報社入社。記者を経て、「週刊東洋経済」編集長、取締役出版局長、同営業局長、常務取締役第一編集局長を歴任。2006年に退任後、経済ジャーナリストとして独立。早稲田大学オープンカレッジ講師も務める。

大西(おおにし) 良雄(良雄)氏