日銀の金融緩和のEXIT
日本銀行が2013年4月に「量的・質的金融緩和」を導入してから約2年半が経過した。日銀は2%の物価安定目標に強く、明確にコミットし、大規模な金融緩和によって予想物価上昇率を引き上げ、また巨額の国債買い入れによって実質金利を押し下げることを企図したのだ。
実質金利は若干低下したが、物価目標2%は原油価格の下落などで達成できていない。だが、黒田東彦総裁は2016年上半期には目標に達するだろうとの強気の見通しを崩していない。現状では2015年のインフレ率は1%弱の見通しだ(IMFの予測)。これが2016年に入ってさらに加速するとは考えにくい。
日本のインフレ率は2009年からマイナスに転じ、デフレは2012年まで続いた。今後も低成長・低インフレの状況が大きく変化する気配がない中でさらなる金融緩和が実行されたとしても2%インフレの達成は難しい。そろそろ日銀も資源価格の下落などを理由に2%目標を放棄すべきだと考える。そして、いずれアメリカ同様、金融緩和策からのEXIT(出口)を考えなければならないのではないか。
2015年12月7日
- 円安局面の終焉
(2015年4月6日) - 日本の格差問題は要注視
(2015年4月13日) - 上がらない実質賃金
(2015年4月20日) - クールジャパン
(2015年4月27日) - 石油価格下落のインパクト
(2015年5月4日) - インバウンド効果で消費に春
(2015年5月11日) - 貿易黒字は定着するか
(2015年5月18日) - 「IT」から「IoT」へ
(2015年5月25日) - 2015年の景気回復
(2015年6月1日) - 内需型中小企業の海外進出
(2015年6月8日) - 急増する空き家
(2015年6月15日) - ニッポンの創造性
(2015年6月22日) - 減速する中国経済
(2015年6月29日) - 円安効果のプラスとマイナス
(2015年7月6日) - 遅れる在庫調整
(2015年7月13日) - 低金利時代
(2015年7月20日) - 日本のレストランがスゴイ
(2015年7月27日) - 「自治体半減」の危機
(2015年8月3日) - 物価の「基調」
(2015年8月10日) - 日本の駅がスゴい!
(2015年8月17日) - 高成長が続くインド経済
(2015年8月24日) - 中国経済を覆う靄
(2015年8月31日) - コンパクトシティ化
(2015年9月7日) - マンガ大国・ニッポン
(2015年9月14日) - AIIBとADB
(2015年9月21日) - 米利上げの功罪
(2015年9月28日) - 生産の国内回帰
(2015年10月5日) - 地方創生
(2015年10月12日) - ヨーロッパの構造問題
(2015年10月19日) - 増加する海外M&A
(2015年10月26日) - 一億総活躍
(2015年11月2日) - 格差社会アメリカ
(2015年11月9日) - 分譲マンションの老朽化
(2015年11月16日) - 公共施設老朽化
(2015年11月23日) - ブライト企業
(2015年11月30日)
1941年生まれ。
1965年大蔵省(現財務省)入省。東海財務局長、大臣官房審議官(国際金融局担当)、国際金融局次長、国際金融局長を経て1997~1999年財務官。現在は青山学院大学教授、財団法人インド経済研究所理事長。
【財団法人インド経済研究所HP】