日本の問題

内需型中小企業の海外進出

NTTデータ経営研究所所長・社会経済学者
斎藤 精一郎 氏

海外で事業展開する地方の中小企業が増えている。車や家電などの大手メーカーに付随する形で進出する中小企業だけではなく、最近は海外取引が少ない地方の内需型中小企業(飲食業や理容業、宿泊業など)が海外進出に意欲を示しつつある。

企業の海外進出は総称して「海外直接投資」と呼ぶが、これは海外に工場を建設したり店舗を開設したりするだけでなく、海外企業の買収(M&A)も含む。企業はこの海外直接投資によって拡大著しい現地ニーズに素早く対応し、売り上げの増加を目指す。かつての海外直接投資はアジアの安価な人件費が主要な理由だったが、今や様相は一変。円安でもその勢いはやまない。

特筆すべきは、内需型の地方企業の意欲だ。それは国内市場、とりわけ地方経済の低迷が続き、成長著しい海外市場に関心を抱かざるを得ないということを意味する。座して死を待つより新天地で再生に賭けようとの思いもあるのだろう。最近の訪日外国人客の増加も、地方のサービス業などに「これからは海外ニーズを積極的に取り込んでいかなければ」というインセンティブを与えているのかもしれない。

2015年6月8日

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1940年生まれ。社会経済学者・エコノミスト。
1963年日本銀行入行。1972年立教大学社会学部講師に転身し、助教授を経て1980年教授。テレビの経済情報番組でコメンテーターも務める。現在はNTTデータ経営研究所(株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所)所長。

斎藤 精一郎氏