日本の問題

日本の格差問題は要注視

NTTデータ経営研究所所長・社会経済学者
斎藤 精一郎 氏

フランスの経済学者、トマ・ピケティの著作「21 世紀の資本」は堅い内容の経済書にもかかわらず、2014年春に米国で売り出されるや、ベストセラーになった。2014 年12月に遅れて発売された日本でも約9 カ月遅れで、ベストセラー入り。折しもピケティ本人の来日もあって、日本でも「ピケティ現象」が巻き起こったのだ。

ピケティは200 年以上の長期間にわたって膨大なデータ、特に税関連統計を掘り起こし、1980 年代以降、欧米で所得と富(金 融資産、土地・建物など)が一部の上位所得者(例えば、トップ一割の富裕層)に集中しつつあり、これは約100 年前の19 世紀後半から20 世紀初頭にかけての所得と富の格差拡大の流れに類似すると、具体的な数字と図表で示した。

米欧の所得・富の格差拡大は各種の統計や抗議運動などで知られるが、幸いなことに日本では統計上も実際も米欧ほどの格差はない。だが、雇用の約4 割を非正規雇用が占める昨今、正規雇用者と非正規雇用者の間の所得格差や雇用条件の違いは無視できない。この日本の現実を決して過小評価してはならないと考えている。

2015年4月13日

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1940年生まれ。社会経済学者・エコノミスト。
1963年日本銀行入行。1972年立教大学社会学部講師に転身し、助教授を経て1980年教授。テレビの経済情報番組でコメンテーターも務める。現在はNTTデータ経営研究所(株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所)所長。

斎藤 精一郎氏