遅れる在庫調整
富士通総研 上席主任研究員
米山秀隆 氏
米山秀隆 氏
企業が抱える在庫が適正水準か否かは景気変動に大きな影響を及ぼす。売れ行き不振で在庫が積み上がれば、減産が行われ、景気にはマイナスの影響を、売れ行きが好調で在庫が減れば、増産が行われ、景気にはプラスの影響を及ぼす。景気がさらに好調な局面では、先行きの売れ行き増を見越して、在庫を大きく積み増すこともある。
日本経済ではこれまで、2014年4月の消費税率引き上げ後に積み上がった在庫を減らす在庫調整が進められてきた。しかし、まだ、完全に終わったとはいえない状況にある。例えば、消費税率引き上げ後の自動車販売の回復の遅れから、自動車の在庫は、なお解消されていない。2015年4~6月期は自動車の在庫調整などによって、一時的に鉱工業生産の回復が停滞する恐れがある。
在庫調整の遅れは、増税後の実質賃金の目減りに伴う消費の戻りの弱さを反映している。しかし、今後については、春の賃上げや夏のボーナス増加に伴う実質賃金の上昇に伴い、消費が回復に向かい、在庫調整の終了とともに、鉱工業生産は回復していくと考えられる。
2015年7月13日
- 円安局面の終焉
(2015年4月6日) - 日本の格差問題は要注視
(2015年4月13日) - 上がらない実質賃金
(2015年4月20日) - クールジャパン
(2015年4月27日) - 石油価格下落のインパクト
(2015年5月4日) - インバウンド効果で消費に春
(2015年5月11日) - 貿易黒字は定着するか
(2015年5月18日) - 「IT」から「IoT」へ
(2015年5月25日) - 2015年の景気回復
(2015年6月1日) - 内需型中小企業の海外進出
(2015年6月8日) - 急増する空き家
(2015年6月15日) - ニッポンの創造性
(2015年6月22日) - 減速する中国経済
(2015年6月29日) - 円安効果のプラスとマイナス
(2015年7月6日)
1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
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