生産の国内回帰
富士通総研 上席主任研究員
米山秀隆 氏
米山秀隆 氏
円レートと海外生産の関係については、予想円レートが円安方向に振れると、およそ2年後に海外生産比率の上昇が抑制されるという経験則がある。「アベノミクス」による円安が定着して3年近くが経ち、企業の生産や投資行動が、円安を前提としたものに変わりつつある。
経済産業省が2014年12月に行った調査によれば、海外工場を持つ企業のうち約13%が過去2年で「国内生産回帰の実績がある」と回答した。理由は、「品質や納期など海外での課題があった」(約34%)に次ぎ、「国内生産でも採算が確保できるようになった」(約24%)があげられていた(「海外の生産コストが上昇した」も同率)。
また、内閣府の2015年1月の調査によれば、5年後(2019年度)の海外生産比率の見通しが、2014年度より上昇すると回答した企業が約53%と半数を超えたが、前年度調査の約61%に比べればかなり減り、4年ぶりに低下した。企業活動がグローバル化する中、消費地に近い現地生産体制を構築していく姿勢は今後も変わりないが、円安定着により、国内生産の競争力が回復したことを反映している。
2015年10月5日
- 円安局面の終焉
(2015年4月6日) - 日本の格差問題は要注視
(2015年4月13日) - 上がらない実質賃金
(2015年4月20日) - クールジャパン
(2015年4月27日) - 石油価格下落のインパクト
(2015年5月4日) - インバウンド効果で消費に春
(2015年5月11日) - 貿易黒字は定着するか
(2015年5月18日) - 「IT」から「IoT」へ
(2015年5月25日) - 2015年の景気回復
(2015年6月1日) - 内需型中小企業の海外進出
(2015年6月8日) - 急増する空き家
(2015年6月15日) - ニッポンの創造性
(2015年6月22日) - 減速する中国経済
(2015年6月29日) - 円安効果のプラスとマイナス
(2015年7月6日) - 遅れる在庫調整
(2015年7月13日) - 低金利時代
(2015年7月20日) - 日本のレストランがスゴイ
(2015年7月27日) - 「自治体半減」の危機
(2015年8月3日) - 物価の「基調」
(2015年8月10日) - 日本の駅がスゴい!
(2015年8月17日) - 高成長が続くインド経済
(2015年8月24日) - 中国経済を覆う靄
(2015年8月31日) - コンパクトシティ化
(2015年9月7日) - マンガ大国・ニッポン
(2015年9月14日) - AIIBとADB
(2015年9月21日) - 米利上げの功罪
(2015年9月28日)
1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】