「自治体半減」の危機
社会経済学者・エコノミスト
斎藤 精一郎 氏
斎藤 精一郎 氏
長い経済停滞と人口減少傾向の中で、地域経済の疲弊は明らかだ。2040年や2050年に日本の地域社会はどうなっているのか、未来予測で将来の危機を描き、現在の我々に警鐘を鳴らす動きが目立つ。
日本の1700余の地方自治体(市区町村)のうち、約半分の900近い市区町村が2040年に消滅の危機を迎えているという、民間機関による「消滅シナリオ」は衝撃的だ。最近は、地方でも危機感が顕在化しつつあり、政府も成長戦略の柱に「地方創生」を大々的に打ち上げる。むろん、政府の地方への補助金交付などの財政支援は期待できるが、ここで予期せぬ「援軍」が登場。訪日外国人客の急増だ。かつてないインバウンド効果、とりわけ中国人旅行客の「爆買い」で地方の観光地が潤ってきた。
とはいえ、インバウンド効果は一部地域に限定され、多大な期待は無理だろう。多くの地方が創生を実現するには自治体自体と住民自身の主体的な「取り組み」が不可欠。それには下火になっている「地方分権改革」を実現し、地方自治体と住民の間に地域再生への強い「自覚と責任」を醸成するしかない。
2015年8月3日
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1940年生まれ。社会経済学者・エコノミスト。
1963年日本銀行入行。1972年立教大学社会学部講師に転身し、助教授を経て1980年教授。テレビの経済情報番組でコメンテーターも務める。1991年4月から2015年6月までNTTデータ経営研究所(株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所)所長。