日本の問題

増加する海外M&A

富士通総研 上席主任研究員
米山秀隆 氏

日本企業による海外企業のM&Aが増加している。2015年1~9月の海外M&Aは約9.0兆円と、過去最高だった2006年(約8.6兆円)をすでに上回っている(レコフ調べ)。

海外M&Aは通常、円建ての買収金額が少なくて済む円高局面で行うのが有利である。円安局面にもかかわらず海外M&Aが増えている背景としては、第一に、人口減少で国内マーケットが縮小する中、新たな需要を開拓するため、企業が海外展開を急いでいることがある。最近は食品、飲料など内需型産業の海外M&Aも増えている。

第二に、企業収益が過去最高水準となる中、企業の手元資金が潤沢となり、その有効な活用を求められていることがある。近年は、キャッシュを遊ばせている企業に対する海外投資家や機関投資家の視線が厳しくなっている。すでに世界規模で事業展開している企業でも、新たな収益源を求め、海外M&Aを行うケースが目立っている。

今後も海外M&Aに踏み切る日本企業は増え、海外展開のスピードは速まっていくと考えられる。ただ、成功するかどうかは過去の事例でも明暗が分かれる。

2015年10月26日

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1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏