供給過剰の貸家
富士通総研 上席主任研究員
米山秀隆 氏
米山秀隆 氏
2014年4月の消費税率引き上げ前に住宅着工は駆け込み需要で増加し、その後落ち込んだが、貸家は減少が軽微で持ち直しも早かった。2015年1月に相続税課税が強化され、税金対策としての貸家建設が増えたためだ。相続税の計算では、貸家が建つ土地の資産評価を下げられる。
一方、地銀や第二地銀、信金は、貸家を建設する個人などへの融資を増やし、2015年の新規貸出額は過去最高。総貸出額に占める割合は過去2年ほどで上昇し、1~2割ほどに達している。貸出先が乏しい中、貸家融資に傾斜しているのだ。
こうして貸家供給は増え続けているが、2019年をピークに全国の世帯数は減少に転じる見通しで、貸家需要も減っていく。現状でも貸家の空室率は18.8%(2013年)と高率。新築は満室になるが、古い物件は立地が悪いとすぐに空室が増える。
日銀は、貸家向け融資の収支計画の甘さを指摘している。将来的に空室が増えれば、融資が焦げ付く恐れがある。貸家が供給過剰になっていることは、空き家問題を深刻化させる一因になるとともに、地銀などの経営を揺さぶる懸念がある。
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1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
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