日本の問題

経済予測の的中率

ジャーナリスト
蟹瀬 誠一 氏

新年になると、景気の先行きを知りたくて水晶玉をのぞき込む。ところが見えるのは不安だけ。そこで専門家のご宣託を仰ぐことになるのだが、そもそも専門家と呼ばれる方々の予測はどの程度的中するのか。

その疑問を解くべく、アメリカの組織行動学者フィリップ・テトロック博士が大々的な調査分析をしたことがある。その結果によれば、経済学者をはじめとした専門家の予測の当たる確率は私たち素人の予測の的中率とほとんど変わらないという。しかもメディアで有名な専門家ほど、その確率が低かったというから面白い。理由は自信過剰で断定口調になりがちだからだという。

もちろんこの研究が専門家の分析能力を否定しているわけではない。実際の経済や社会が私たち人間の想像以上に複雑で予測不可能だということを示しているのである。別の言い方をすれば、未来は過去や現在の延長線上にないということだ。

日本では「アベノミクス」の先行きに悲観論と楽観論が交錯しているが、ご自身の賢明な判断を信じて専門家の意見は参考程度にするのが得策だろう。どうせ当たる確率は同じなのだから。

2016年1月25日

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蟹瀬(かにせ) 誠一(せいいち) 氏

1950年、石川県生まれ。
上智大学文学部新聞学科卒業後、アメリカAP通信社記者、フランスAFP通信社記者、アメリカTIME誌特派員を経て、1991年TBS「報道特集」キャスターとしてテレビ報道界に転身。国際政治や経済、文化に詳しく、現在もテレビ東京「マネーの羅針盤」メインキャスターなどを務める。

蟹瀬(かにせ) 誠一(せいいち) 氏