日本の問題

慎重な企業行動

富士通総研 上席主任研究員
米山秀隆 氏

企業収益が過去最高になったわりに、賃上げ、設備投資とも企業の消極的な姿勢が目立つ。2012年度から2014年度にかけての企業行動の変化をみると、経常利益が増加し、現・預金等は大幅に積み増されたが、設備投資、従業員給与・賞与の増加はわずかにとどまっている。

賃上げに消極的な理由としては、いったん賃上げを行ったら下げるのは難しく、また、デフレ下で賃金を引き下げられずに、労働分配率が高止まりした記憶が企業にとっては新しいことがある。

投資に関しては、120円台の円安が定着し投資の国内回帰の動きが一部で進んだが、企業にとっては、為替が先行き円高方向に振れた場合のリスクも考慮に入れておかなければならない。また、人口減少で国内マーケットが縮小する中、消費地に近い現地で生産するという大きな動きまでを変えることは難しいという理由もある。

賃上げ、設備投資増加に弾みをつけ先行きの景気の好循環をより強いものにするためには、政府・日銀が、企業が国内での活動を拡大させることにためらいが生じないような環境整備を行う必要がある。

2015年12月14日

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1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏