慎重な企業行動
富士通総研 上席主任研究員
米山秀隆 氏
米山秀隆 氏
企業収益が過去最高になったわりに、賃上げ、設備投資とも企業の消極的な姿勢が目立つ。2012年度から2014年度にかけての企業行動の変化をみると、経常利益が増加し、現・預金等は大幅に積み増されたが、設備投資、従業員給与・賞与の増加はわずかにとどまっている。
賃上げに消極的な理由としては、いったん賃上げを行ったら下げるのは難しく、また、デフレ下で賃金を引き下げられずに、労働分配率が高止まりした記憶が企業にとっては新しいことがある。
投資に関しては、120円台の円安が定着し投資の国内回帰の動きが一部で進んだが、企業にとっては、為替が先行き円高方向に振れた場合のリスクも考慮に入れておかなければならない。また、人口減少で国内マーケットが縮小する中、消費地に近い現地で生産するという大きな動きまでを変えることは難しいという理由もある。
賃上げ、設備投資増加に弾みをつけ先行きの景気の好循環をより強いものにするためには、政府・日銀が、企業が国内での活動を拡大させることにためらいが生じないような環境整備を行う必要がある。
2015年12月14日
- 円安局面の終焉
(2015年4月6日) - 日本の格差問題は要注視
(2015年4月13日) - 上がらない実質賃金
(2015年4月20日) - クールジャパン
(2015年4月27日) - 石油価格下落のインパクト
(2015年5月4日) - インバウンド効果で消費に春
(2015年5月11日) - 貿易黒字は定着するか
(2015年5月18日) - 「IT」から「IoT」へ
(2015年5月25日) - 2015年の景気回復
(2015年6月1日) - 内需型中小企業の海外進出
(2015年6月8日) - 急増する空き家
(2015年6月15日) - ニッポンの創造性
(2015年6月22日) - 減速する中国経済
(2015年6月29日) - 円安効果のプラスとマイナス
(2015年7月6日) - 遅れる在庫調整
(2015年7月13日) - 低金利時代
(2015年7月20日) - 日本のレストランがスゴイ
(2015年7月27日) - 「自治体半減」の危機
(2015年8月3日) - 物価の「基調」
(2015年8月10日) - 日本の駅がスゴい!
(2015年8月17日) - 高成長が続くインド経済
(2015年8月24日) - 中国経済を覆う靄
(2015年8月31日) - コンパクトシティ化
(2015年9月7日) - マンガ大国・ニッポン
(2015年9月14日) - AIIBとADB
(2015年9月21日) - 米利上げの功罪
(2015年9月28日) - 生産の国内回帰
(2015年10月5日) - 地方創生
(2015年10月12日) - ヨーロッパの構造問題
(2015年10月19日) - 増加する海外M&A
(2015年10月26日) - 一億総活躍
(2015年11月2日) - 格差社会アメリカ
(2015年11月9日) - 分譲マンションの老朽化
(2015年11月16日) - 公共施設老朽化
(2015年11月23日) - ブライト企業
(2015年11月30日) - 日銀の金融緩和のEXIT
(2015年12月7日)
1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】