日本の問題

近代資本主義の終焉

青山学院大学教授、元財務官
榊原英資氏

近代資本主義はいわゆる「長い16世紀」(1450~1640年ごろ)あたりから始まったとされる。イタリア諸都市からスペインなどを経てその中心は北上し、覇権は次第にイギリスへ移動していった。19世紀半ば~20世紀初めはパクス・ブリタニカの時代と呼ばれ、特にイギリス海軍は世界の海を支配し絶対的優位性を誇っていた。

2つの世界大戦を経て覇権はアメリカに移っていくが、近代資本主義は第二次世界大戦後、最盛期を迎える。アメリカ主導の「金ドル本位制」、すなわちIMF・GATT体制(ブレトンウッズ体制)のもと世界経済は高い成長率を達成したのだ。

しかし、21世紀に入ると主要国は成熟局面に入り、「豊かなゼロ成長」の時代に移行。低成長・低インフレの段階に入った。「より速く・より遠く・より合理的」に展開した近代資本主義は終焉し、ポスト・モダン時代に直面した主要国は低利潤低金利のもと「より近く・よりゆっくり」歩まざるをえなくなったのだ。第二次世界大戦後、猛烈な勢いで主要国にキャッチアップした日本も例外ではない。新しい資本主義の時代をどう切り開くかが問われる。

2016年2月29日

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榊原英資 さかきばらえいすけ氏

1941年生まれ。
1965年大蔵省(現財務省)入省。東海財務局長、大臣官房審議官(国際金融局担当)、国際金融局次長、国際金融局長を経て1997~1999年財務官。現在は青山学院大学教授、財団法人インド経済研究所理事長。
【財団法人インド経済研究所HP】

榊原英資氏