日本の問題

控えめな春闘の要求水準

富士通総研 上席主任研究員
米山秀隆 氏

春季賃上げ率は2014年、2015年と2年連続で2%台となり、同時に2年連続のベースアップが実現されたが、今年の組合側の要求はトーンダウンしている。昨年は「2%以上」としていたのに対し、今年は「2%程度を基準」としている。

この背景には、企業収益は高水準であるものの、伸びは鈍化傾向にあること、エネルギー価格下落の影響により消費者物価の伸びが鈍化していることがある。

このほか、中小企業の賃上げが大企業に追いつかない状況になっているという理由もある。この点に関しては、今年の要求には、大企業労組の要求に幅を持たせたうえ、大企業が系列の中小企業からの仕入れ価格引き上げなどの配慮をすることで、中小企業の底上げ実現を図るという狙いもある。

物価が安定的に上昇し、デフレから脱却したと完全にいえるためには賃金の持続的な上昇が欠かせない。消費者物価と時間当たり賃金の伸びは、長期的に見るとほぼ連動している。物価上昇率が2%を超えていた1990年代初頭は、賃金は4~5%伸びていた。それにはまだ遠いが、賃金上昇を継続させていくのが重要である。

2016年2月8日

過去記事一覧

米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏