日本の問題

物価上昇期待が低下

富士通総研 上席主任研究員
米山秀隆 氏

昨年10~12月期の実質GDP成長率がマイナスとなり、景気の足踏み状態が続いている。中国経済の先行き不安や原油安に端を発する、年初来の株安、円高も日本経済の先行き不安を高めている。「アベノミクス」導入以来、先行き(1年後)の物価上昇を予想する世帯の割合は上昇してきたが、昨年4月をピークに低下傾向にある。

これまで「アベノミクス」は大幅な円安をもたらし、企業収益の回復と雇用の改善をもたらしてきた。また、生産の国内回帰が進み、企業の設備投資意欲も高まった。さらに、訪日外国人の増加は国内の観光資源の開発を加速させた。景気回復に伴い、先行きの物価上昇期待は高まった。

しかし、一方では、日本経済の限界もあらわとなった。端的なのは人手不足。現在の失業率は完全雇用水準に近く、従来の雇用構造が続く限り、成長が天井に達することが明白となった。今こそ、潜在成長率を高める構造改革が必要だが、政府の動きは鈍い。一方で、日本銀行は円高阻止のため、マイナス金利の導入にまで踏み切った。しかし、景気の停滞から脱却するには、しばらく時間がかかりそうである。

2016年3月7日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏