幼児化する日本社会
日本社会がかつて持っていたような奥深さ、あるいは節度を失ってきているのではないかと危惧しているのは筆者だけではないだろう。物事を単純に白だ、黒だと決めつけてどちらかを一方的に攻撃する。他人は自分の思いどおりに動くものだと思い込む。要するに幼児化しているのだ。クレーマーの増加はその表れだろう。それに対する企業も、しばしば謝りすぎているようだ。
政治家や財界人は世襲が増加し、2代目・3代目が目立って増えている。世襲が常に問題だというわけではないが、人材の流動性が低くなると、社会を狭くしてしまう。
高度成長期を演出した池田勇人首相や佐藤栄作首相はそれぞれ大蔵次官、運輸次官として長い行政経験を有していたし、土光敏夫氏らの財界人も複数の企業で活躍していた。「財界の鞍馬天狗」の異名を持つ中山素平氏もまた、多方面で活躍した財界人だった。
現在の世襲政治家や世襲財界人にはそうした幅の広さを有していない人が多い気がする。他の世界を知らないまま後を継ぐと、どうしても経験の積み重ねが少なくなってしまう気がしてならない。
2016年6月13日
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(2016年6月6日)
1941年生まれ。
1965年大蔵省(現財務省)入省。東海財務局長、大臣官房審議官(国際金融局担当)、国際金融局次長、国際金融局長を経て1997~1999年財務官。現在は青山学院大学教授、財団法人インド経済研究所理事長。
【財団法人インド経済研究所HP】