日本の問題

「金」の輝き

ジャーナリスト
蟹瀬 誠一 氏

経済危機で必ずといっていいほど、注目されるのが金。有史以来もっとも価値ある金属として装飾品や投資の対象になってきた。なぜなら、お札はインフレなどで信用が失墜するリスクがあるからだ。ハイパーインフレに陥り、600億ジンバブエドルで牛乳1パックしか買えなくなったジンバブエ共和国の例をみれば明らかだろう。

古代エジプトの時代から人類が金に魅了されてきたのは輝きだけではない。柔軟で腐食に強い性質が加工に適していたということもあるようだ。

ところで、実は純金は人工的に作ることができる。驚かれたかもしれないが、金よりも原子番号がひとつ大きい水銀にガンマ線を照射すると原子核が崩壊して水銀が金に変わるのだ。

しかし、この錬金術を行うには現代の技術では気が遠くなるような長い年月と莫大な資金がかかるため、まったく採算が取れないのだという。

というわけで、金の輝きは今も色あせていない。そういえば日本も「黄金の国」と呼ばれた時代があった。その輝きをいつまでも失わないでいたいものだ。

2016年5月16日

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蟹瀬(かにせ) 誠一(せいいち) 氏

1950年、石川県生まれ。
上智大学文学部新聞学科卒業後、アメリカAP通信社記者、フランスAFP通信社記者、アメリカTIME誌特派員を経て、1991年TBS「報道特集」キャスターとしてテレビ報道界に転身。国際政治や経済、文化に詳しく、現在もテレビ東京「マネーの羅針盤」メインキャスターなどを務める。

蟹瀬(かにせ) 誠一(せいいち) 氏