日本の問題

円安から円高へ

青山学院大学教授、元財務官
榊原英資氏

2012年12月、安倍晋三第2次政権が成立した時の円ドルレートは1ドル=83円64銭(中心相場の月中平均)だったが、2013年3月に黒田東彦日銀総裁が任命され、「異次元金融緩和」が行われると円ドルレートは次第に円安に傾き、2013年5月には1ドル=100円を突破(月中平均で101円08銭)し、2015年3月には1ドル=120円を上回るに至った(月中平均で120円39銭)。

その後、2015年中はおおむね1ドル=120円台の展開が続いたが、2016年に入ると、アメリカの利上げペースの緩和、中国経済の減速などから1ドル=120円を切り、1月には月中平均で118円25銭、2月には115円02銭、3月には113円07銭と急速に円高が進んだ。4月末には110円前後で推移している。

日本の経常収支が大きく改善され(2015年通年では16兆6413億円の黒字)、今後もその傾向が続く可能性が高いことなどを考え合わせると、円高がさらに進む可能性は捨てきれない。1ドル=90円台に入ることも想定しておくべきなのではないだろうか。

2016年5月23日

過去記事一覧

榊原英資 さかきばらえいすけ氏

1941年生まれ。
1965年大蔵省(現財務省)入省。東海財務局長、大臣官房審議官(国際金融局担当)、国際金融局次長、国際金融局長を経て1997~1999年財務官。現在は青山学院大学教授、財団法人インド経済研究所理事長。
【財団法人インド経済研究所HP】

榊原英資氏