日本の問題

円高の設備投資への影響

富士通総研 上席主任研究員
米山秀隆 氏

円高の進展による景気の腰折れ懸念が出ている。輸出企業の収益悪化は避けられない。実際、製造業大企業の売上高経常利益率の2012年10~12月から2015年10~12月までの改善の多くは、価格効果によってもたらされた。円安による円ベースの売り上げ増や原油価格下落が寄与した部分である。これに対し、数量効果、すなわち売り上げ数量が増加したことによる収益増加分は小さかった。

数量効果による収益増のケースでは、生産能力拡大を図るための設備投資が行われやすい。これに対し、価格効果による収益増のケースでは、生産能力を増強させる必要性は乏しい。にもかかわらず、昨年来、各種調査からみて、企業の設備投資意欲が高まっているのは、手元資金が潤沢な現時点で、設備を最新鋭のものに置き換えたいという意向が強まっていることによる。リーマンショック以来、投資を手控え、設備が老朽化しているという要因が大きい。

したがって、円高の進展による価格効果の減殺で、当面、収益に悪影響が及ぶにしても、企業の投資意欲が大きくそがれる可能性は低いと判断できる。

2016年5月30日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏