日本の問題

働き方改革

PHP総研 主席研究員
荒田英知 氏

昨秋発足した第3次安倍改造内閣が看板政策に掲げた「一億総活躍」の工程表が、5月18日に開催された一億総活躍国民会議で決定した。「GDP600兆円」「希望出生率1.8」「介護離職ゼロ」という「新3本の矢」を実現するための横断的課題として、「働き方改革」を前面に打ち出し、2つの改革を明記したことが大きな特徴である。

まず、多様で柔軟な働き方の選択を広げるために、労働者の約4割を占める非正規雇用者の待遇改善を「待ったなしの重要課題」と位置づけ、正規雇用と比べて4割の差がある賃金水準を欧州諸国並みの2割まで縮め、同一労働同一賃金の実現に向けて「躊躇なく法改正の準備を進める」とした。

加えて、長時間労働が家庭生活との両立を困難にしていると指摘。労使の合意があれば上限なく時間外労働が認められる36協定を再検討し、週49時間以上働いている労働者の割合を、現在の2割から欧州諸国並みの1割にするとした。

与党は、これらを夏の参院選の公約に盛り込む考え。働き方改革を通じて「成長と分配の好循環」を実現するためには、踏み込んだ具体策が求められる。

2016年6月6日

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荒田英知 氏

1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学法文学部を卒業。同年、PHP研究所入社。各種研究プロジェクトのコーディネーターを務めた後、地域政策分野の研究に専念。2010年10月から現職。全国各地を数多くフィールドワークしている。

荒田(あらた) 英知(ひでとも)氏