日本の問題

ヘリコプターマネー

富士通総研 上席主任研究員
米山秀隆 氏

デフレ脱却の究極的手段として、ヘリコプターマネー論議が世界的に活発化している。お札をばらまけば、物価は必ず上昇するという思考実験。日本銀行が国債を購入する前提で、政府が財政を拡大し、日銀が国債を永久保有するか、将来の増税が困難になるなどして政府が国債償還に責任を持たなくなれば、ヘリコプターマネーとなる。

1930年代には、積極財政と日銀による国債引き受けでデフレ脱却に成功した。現在の日銀の国債大量購入も、同様の効果を狙っている。さらにマイナス金利を導入したが、マイナス金利は国債発行で政府に有利なうえ、国債を日銀が購入してくれる形になる。1930年代はその後、財政規律が失われた結果、ヘリコプターマネーとなり、戦後のハイパーインフレを招いた。

一方現在は、消費税率引き上げ延期のほか、補正予算が検討されている。今後、弛緩した財政規律のもと、日銀が国債を売却できない事態となれば、ヘリコプターマネーとなる。しかし、財政規律を喪失することなくデフレ脱却に成功すれば、成功した金融政策の事例として長く記憶されることになる。今後の推移いかんである。

2016年6月20日

過去記事一覧

米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏