日本の問題

ワニの口

PHP総研 主席研究員
荒田英知 氏

国の2017年度予算編成に先立ち、8月末に各省が財務省に示す歳出の概算要求が出そろい、3年連続で100兆円の大台を突破した。平成の初めには約70兆円だったものが、社会保障費の増加や景気対策などで一貫して膨れ上がってきた。

一方で税収をみると、2016年度の国の税収は57兆円を超え、バブル期の1991年度以来25年ぶりの高水準となる見通しだ。リーマン・ショックで40兆円を割り込んだころからは持ち直しつつある。

平成になってからの歳出と税収の推移を折れ線グラフに描くと、税収がほぼ横ばいなのに対して、歳出は右肩上がりを続けている。2本線の乖離は年とともに拡大していく。これが「ワニの口」で、日本の財政状況の悪さを示す図として用いられる。

このワニの大好物は、国債という名の借金である。債務残高は1,000兆円を超え、GDPの2倍超に達する。個人金融資産が1,700兆円あるから大丈夫という見方もあるが、このまま増え続ければ、食いつぶすのも時間の問題。ワニの口をいかにして閉じさせるか。これまた日本が抱える深刻な問題である。

2016年9月19日

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荒田英知 氏

1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学法文学部を卒業。同年、PHP研究所入社。各種研究プロジェクトのコーディネーターを務めた後、地域政策分野の研究に専念。2010年10月から現職。全国各地を数多くフィールドワークしている。

荒田(あらた) 英知(ひでとも)氏