グローバル化の逆回転
富士通総研 主席研究員
米山秀隆 氏
米山秀隆 氏
英国のEU離脱は、英国民の近視眼的な選択などではなく必然の動きであったと考えられる。移民の大量流入への嫌悪感は臨界点に達していた。国境を越える自由な活動はグローバル企業にメリットをもたらした。しかし国が果たすべき、国民の生活や安全を守る役割が果たされなくなっていた。
通貨危機後に明確になったことは、移動を自由化した以上、それによって生じる格差は、豊かな国からそうでない国に財政移転できる財政統合が不可欠ということであった。英国はユーロまでは採用していないが、改めてEUのもとで主権を放棄する道は選ばないと意思表示した。今後も、EUを去る国が出てきても何ら不思議はない。
これはEU内の問題に限らず、グローバル化に直面する他国にもあてはまる。行き過ぎた自由貿易を改め、自国の産業や雇用を守るべきとの主張は、米国、日本などにも存在する。グローバル化はかつて19世紀末にも進んだが、その後逆回転し、2度の大戦を経て現在の世界秩序が形づくられた。今回のグローバル化も、今後は逆回転の動きが強まり、各種の自由貿易交渉は停滞する可能性がある。
2016年8月15日
- 円安局面の終焉
(2015年4月6日) - 日本の格差問題は要注視
(2015年4月13日) - 上がらない実質賃金
(2015年4月20日) - クールジャパン
(2015年4月27日) - 石油価格下落のインパクト
(2015年5月4日) - インバウンド効果で消費に春
(2015年5月11日) - 貿易黒字は定着するか
(2015年5月18日) - 「IT」から「IoT」へ
(2015年5月25日) - 2015年の景気回復
(2015年6月1日) - 内需型中小企業の海外進出
(2015年6月8日) - 急増する空き家
(2015年6月15日) - ニッポンの創造性
(2015年6月22日) - 減速する中国経済
(2015年6月29日) - 円安効果のプラスとマイナス
(2015年7月6日) - 遅れる在庫調整
(2015年7月13日) - 低金利時代
(2015年7月20日) - 日本のレストランがスゴイ
(2015年7月27日) - 「自治体半減」の危機
(2015年8月3日) - 物価の「基調」
(2015年8月10日) - 日本の駅がスゴい!
(2015年8月17日) - 高成長が続くインド経済
(2015年8月24日) - 中国経済を覆う靄
(2015年8月31日) - コンパクトシティ化
(2015年9月7日) - マンガ大国・ニッポン
(2015年9月14日) - AIIBとADB
(2015年9月21日) - 米利上げの功罪
(2015年9月28日) - 生産の国内回帰
(2015年10月5日) - 地方創生
(2015年10月12日) - ヨーロッパの構造問題
(2015年10月19日) - 増加する海外M&A
(2015年10月26日) - 一億総活躍
(2015年11月2日) - 格差社会アメリカ
(2015年11月9日) - 分譲マンションの老朽化
(2015年11月16日) - 公共施設老朽化
(2015年11月23日) - ブライト企業
(2015年11月30日) - 日銀の金融緩和のEXIT
(2015年12月7日) - 慎重な企業行動
(2015年12月14日) - 再生可能エネルギー
(2015年12月21日) - アメリカの「タイヤ伝説」
(2015年12月28日)
- BRICS諸国の低迷
(2016年1月4日) - 急増する民泊
(2016年1月11日) - 観光立国
(2016年1月18日) - 経済予測の的中率
(2016年1月25日) - 低成長・低インフレ時代
(2016年2月1日) - 控えめな春闘の要求水準
(2016年2月8日) - ふるさと納税
(2016年2月15日) - 「スモール」の美しさ
(2016年2月22日) - 近代資本主義の終焉
(2016年2月29日) - 物価上昇期待が低下
(2016年3月7日) - 北海道新幹線
(2016年3月14日) - 「食品ロス」を減らすには
(2016年3月21日) - 逆石油ショックのインパクト
(2016年3月28日) - 増加する耕作放棄地
(2016年4月4日) - リニア中央新幹線
(2016年4月11日) - 地方創生のカギ
(2016年4月18日) - 2016年の世界経済
(2016年4月25日) - 供給過剰の貸家
(2016年5月2日) - ゆるキャラ
(2016年5月9日) - 「金」の輝き
(2016年5月16日) - 円安から円高へ
(2016年5月23日) - 円高の設備投資への影響
(2016年5月30日) - 働き方改革
(2016年6月6日) - 幼児化する日本社会
(2016年6月13日) - ヘリコプターマネー
(2016年6月20日) - 第4次産業革命
(2016年6月27日) - 英EU離脱と円高株安
(2016年7月4日) - 料理王国日本
(2016年7月11日) - 所有者不明の土地
(2016年7月18日) - 都市の高齢化
(2016年7月25日) - 自社株買いと設備投資
(2016年8月1日) - ゲーム大国日本
(2016年8月8日)
1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】