日本の問題

グローバル化の逆回転

富士通総研 主席研究員
米山秀隆 氏

英国のEU離脱は、英国民の近視眼的な選択などではなく必然の動きであったと考えられる。移民の大量流入への嫌悪感は臨界点に達していた。国境を越える自由な活動はグローバル企業にメリットをもたらした。しかし国が果たすべき、国民の生活や安全を守る役割が果たされなくなっていた。

通貨危機後に明確になったことは、移動を自由化した以上、それによって生じる格差は、豊かな国からそうでない国に財政移転できる財政統合が不可欠ということであった。英国はユーロまでは採用していないが、改めてEUのもとで主権を放棄する道は選ばないと意思表示した。今後も、EUを去る国が出てきても何ら不思議はない。

これはEU内の問題に限らず、グローバル化に直面する他国にもあてはまる。行き過ぎた自由貿易を改め、自国の産業や雇用を守るべきとの主張は、米国、日本などにも存在する。グローバル化はかつて19世紀末にも進んだが、その後逆回転し、2度の大戦を経て現在の世界秩序が形づくられた。今回のグローバル化も、今後は逆回転の動きが強まり、各種の自由貿易交渉は停滞する可能性がある。

2016年8月15日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏