日本の問題

所有者不明の土地

富士通総研 主席研究員
米山秀隆 氏

所有者がわからない土地が全国で増えている。人口減少が進む中、相続時に登記されない土地が増えていることによる。

とりわけ、資産価値がない森林や農地などの場合、登録免許税などのコストをかけてまで名義を変更しようと思わないことが多い。そもそも所有権の移転登記は任意で、義務ではない。また、相続を放棄するケースも増えている。国土交通省が昨年度行った調査によれば、ほとんどの都道府県が「過去5年以内に、所有者の把握の難しい土地が存在した」と回答した。

所有者不明の土地の存在は、公共事業や災害復旧・復興の際に、土地取得の障害になっている。また、農地を集積し規模拡大を図ろうとする場合にも問題となっている。国土交通省は今年3月に、現行法の範囲でできる所有者把握のための措置をマニュアル化したが、それだけでは対応不可能な状況に陥っている。また、たとえ相続時の登記の義務付けや登記コストの軽減を図ったとしても、効果が上がるかは定かでない。近い将来、所有者不明の土地を、公的管理下におくことのできる新たな仕組みを創設する必要性が高まっている。

2016年7月18日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏