日本の問題

イノベーションと失業

経済ジャーナリスト
大西良雄 氏

今年4月、経産省がAI(人工知能)、ロボット、IoT(モノのインターネット)などがもたらすイノベーションが雇用に与える影響を試算し、衝撃を与えた。

試算によると現状放置のケースでは、2030年度の雇用は2015年度比で735万人減るという。経理、給与管理、データ入力、銀行の窓口、コールセンター業務、スーパーのレジ係など定型の仕事がAIやロボットに代替されるためだ。

野村総研などの研究によると、日本はAIやロボットに代替可能な労働人口の割合が50%弱にも上る。47%の米国、35%前後の英国より高い。日本のサービス産業は自動化しやすい仕事の従事者が多いというわけだ。定型の仕事からAIやロボットに代替できない仕事への誘導に成功しなければミスマッチ失業が増える。

イノベーションに伴うミスマッチを避けるには高度教育による研究開発、コンサルティング、AIなどシステム開発、セキュリティ管理、ビッグデータの活用などの人材育成が必須だ。きめ細かで高度な介護や医療、高級感のある対人サービスの創出と人材育成も欠かせない。

2016年8月29日

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大西良雄 氏

1945年生まれ。
上智大学経済学部卒業後、東洋経済新報社入社。記者を経て、「週刊東洋経済」編集長、取締役出版局長、同営業局長、常務取締役第一編集局長を歴任。2006年に退任後、経済ジャーナリストとして独立。早稲田大学オープンカレッジ講師も務める。

大西(おおにし) 良雄(良雄)氏