デフレ脱却の意味
富士通総研 主席研究員
米山秀隆 氏
米山秀隆 氏
日本経済がデフレから脱却する必要があるのは、経済を縮小均衡から前向きの循環に変える必要があるからだが、もうひとつの理由は巨額の政府債務にある。緩やかなインフレが実現すれば、政府債務のGDP比は、分母のGDPが増加することで、政府債務残高が一定のままでも低下に向かう。政府債務がもはやGDPの2倍を突破している現状では、増税だけで債務を解消するのは難しくなっている。現実には多かれ少なかれ、債務解消にはインフレで国民負担を増やす「インフレ税」も視野に入れなければならない状況になりつつある。
インフレ期待が高まると長期金利が上昇する懸念があるが、この場合、日銀はマイナス金利の深掘りで抑制することになるだろう。日銀による長期金利の0%への誘導は、この点でも必要な措置になる。インフレとマイナス金利はいずれも、貯蓄超過の主体(民間)の資産を減らし、債務超過の主体(政府)の負債を減らす点で共通点を持つ。増税に加え、インフレとマイナス金利による民間から政府への資産の移転で、政府債務解消への道筋が開けようとしているのが、現在の状況ととらえられる。
2016年10月10日
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(2015年11月30日) - 日銀の金融緩和のEXIT
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(2016年10月3日)
1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】