日本の問題

不動産融資の曲がり角

経済ジャーナリスト
大西良雄 氏

日銀の貸出先別貸出金によると、国内銀行の2016年6月末の製造業向け貸出金残高の前年同期比伸び率は微増にとどまった。これに対して不動産業への貸出金は同約6.7%増、個人貸家業へは同約3.5%増となり不動産融資への傾斜が進んだ。

だが、不動産市況はピークアウト、調整の兆しを見せ始めた。不動産経済研究所によると、首都圏の新築マンションの契約率は6月から3カ月連続で好・不調の目安である70%を下回り、上昇してきた販売価格も6月から下落に転じている。

上場不動産投信の値動きを示す東証REIT指数は9月中旬には、4月高値比で約8%下落。大手不動産の株価も好業績予想にもかかわらず年初来高値に比べ20%~30%も下落し、市況のピークアウトを予感しているかのようだ。

個人貸家業でも不安が増した。首都圏の新築賃貸アパートの空室率は適正水準といわれる30%を大きく上回り、東京都区部の家賃も4月から再び下落に転じた。貸家の供給過剰が懸念される。

超低金利下の運用難がもたらした不動産融資傾斜のツケが表面化し始めた。

2016年9月26日

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大西良雄 氏

1945年生まれ。
上智大学経済学部卒業後、東洋経済新報社入社。記者を経て、「週刊東洋経済」編集長、取締役出版局長、同営業局長、常務取締役第一編集局長を歴任。2006年に退任後、経済ジャーナリストとして独立。早稲田大学オープンカレッジ講師も務める。

大西(おおにし) 良雄(良雄)氏