日本の問題

物価下落と春闘ベア

経済ジャーナリスト
大西良雄 氏

2016年9月のコアCPI(生鮮食品を除く消費者物価の総合指数)は前年同月比0.5%下落し、7カ月連続のマイナスとなった。デフレへの回帰が危ぶまれる。

ただ、物価下落のおかげで実質賃金(事業所規模5人以上)は2016年2月から8月まで7カ月連続のプラスとなった。2%物価目標を掲げる日銀の企図とは裏腹に、物価下落という形でようやく賃金上昇が物価に追い付いたことになる。

悩ましいのは来春闘だ。労組の中央組織・連合は2017年春闘の賃上げ要求を定昇2%程度、ベースアップ(ベア)2%程度の計4%程度とする2016年同様の水準に決めた。だが、企業の業績は芳しくない。9月の日銀短観によれば、春闘をリードする大企業の2016年度経常利益計画は製造業が前年度比マイナス14.6%と減益幅を拡大、好調だった非製造業もマイナス4.2%の減益に転じている。

一方、物価下落で実質賃金が回復し、物価上昇を補う役割のベアも厳しい。連合の2016年春闘ベア実績は0.44%に過ぎず2%程度というベア要求は来春闘もお題目に終わるのではないか。

2016年11月21日

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大西良雄 氏

1945年生まれ。
上智大学経済学部卒業後、東洋経済新報社入社。記者を経て、「週刊東洋経済」編集長、取締役出版局長、同営業局長、常務取締役第一編集局長を歴任。2006年に退任後、経済ジャーナリストとして独立。早稲田大学オープンカレッジ講師も務める。

大西(おおにし) 良雄(良雄)氏