日本の問題

公共投資の意義

富士通総研 主席研究員
米山秀隆 氏

経済対策としての公共投資は評判が悪い。しかし、グローバル化が進展し、民間企業が国内投資に極めて慎重になる局面では本来、果たすべき役割が大きい。この点は、19世紀後半のイギリスが見舞われた、デフレを伴う長期不況の処方箋に関する、経済学者ケインズの議論が参考になる。

この時期は、それまでイギリスの繁栄をもたらしてきたグローバル化が、必要以上に海外投資を促し、資本の海外流出を招き、逆にイギリスの国内経済衰退をもたらす要因に変わっていた。こうした場合に、いかにして経済を再生させることができるのか。ケインズが着目したのは、国内経済が停滞すると、民間投資が長期的な視点からみて有意義な部門に投資されにくくなるという点であった。

ケインズはこうした場合、国家が国内投資に積極的な役割を果たすべきと考えた。政府が公共投資を行い、将来に資するインフラを整備することこそが、長期停滞から脱却する道であるとした。政府が新たな経済対策で打ち出した21世紀型インフラの整備は、こうした方向性に合致するものと評価できる。

2016年11月7日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏