日銀ETF買い増額の功罪
経済ジャーナリスト
大西良雄 氏
大西良雄 氏
日銀が7月末の金融政策決定会合でETF(指数連動型上場投信)を年間3.3兆円から6兆円へと2倍近くに増額して間もなく3カ月。効果はどうだったか。
8月、9月の買い入れ回数(設備・人材投資支援ETFを除く)は計17回(1回平均約681億円)で、買い入れ総額(設備・人材投資支援ETFを含む)は1兆2,089億円となった。東京証券取引所によると、この間、海外投資家は1兆5,700億円余を売り越しており、日銀のETF買いが海外投資家の売りをかなり吸収したことになる。
株価はどうだろう。買い入れ増額前の7月中の日経平均株価の高値・安値の値幅は約1,832円だったが、8月の値幅は約1,022円、9月は約871円と大幅に縮小、株価は安定度を増した。この間一時1ドル=100円台の円高を経験、日経平均の1万5,000円割れも懸念されたが、終値はおおむね1万6,400円台を維持、日銀の狙いどおり下値が堅い展開となった。
ただ、海外投資家は景気や企業業績を反映しない不透明な株価に対し、売り越し姿勢を崩していない。日本株に見切りをつけ始めているように見える。
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1945年生まれ。
上智大学経済学部卒業後、東洋経済新報社入社。記者を経て、「週刊東洋経済」編集長、取締役出版局長、同営業局長、常務取締役第一編集局長を歴任。2006年に退任後、経済ジャーナリストとして独立。早稲田大学オープンカレッジ講師も務める。