日本の問題

住宅の所有と利用の分離

富士通総研 主席研究員
米山秀隆 氏

空き家増加が社会問題となっている。住宅取得時点では、それが将来にわたって資産となるはずであった。しかし、空き家を相続しても使い道がなければ、税負担だけでなく、崩れ落ちて通行人がけがをした場合の賠償責任まで負う必要がある。

最近、売り手が買い手に100万円支払い、ようやく売却できた例を聞いた。所有者責任を問われるばかりで、売るに売れない状況になるのなら、所有することに意味があったのかとの考え方も成り立つ。

これに対し、所有と利用を分離する試みが茨城県つくば市で現れた。住宅利用者は子育て期など広い住宅が必要な期間のみ、土地と建物(スケルトン)を賃借する。期間終了後は高齢者向け住宅などに移り、土地とスケルトンは新たな利用者に回す。スケルトンは長持ちする構造とし、利用者は内装を自由に変更できる。土地とスケルトンは、特定目的会社が所有する。

所有しなくても十分な質と広さの住宅に住める仕組みで、期間が終われば次に回すため、空き家になることもない。シェアに抵抗がない若い世代に受け入れられれば、広がっていく可能性もある。

2017年2月20日

過去記事一覧

米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏